今、一番売れているビジネス書。でお馴染みの「キングダム」について、経営戦略の観点から整理しました。
事業戦略編 で、
①“型”で勝つ。型を身に付けねば型破りにはなれない
②俯瞰して、全体像を捉え、敵を分析せよ
③リスク発現を見据えたシナリオプランニング
④本質を捉え、末端でも分かりやすい戦略
の4点を説明させて頂きました。
コンセプト設計編では、一番重要となる
⑤“戦略(Strategy)”より“思想(Concept)”が重要
という事に説明させて頂きました。
後編では、残りの2点を説明します。
⑥“人材の最適化”が経営戦略の最強の一手
嬴政、呂不韋、昌文君、昌平君、李牧にしろ、国政を担う彼らが最も優れているスキルは、“人材の最適化”です。
趙国の国王は、“人材の最適化”スキルがない故に、李牧という中華で最も優れた人材を擁しても、国を亡ぼす事になります。
一方、昌文君は、自分自身のスキルは高くないです。ただ、彼は私情に流されず、最適な人材を意思決定者のリーダーに推薦する事ができます。
彼は、嬴政の中華統一後の政治には、法律国家の重要性を理解します。そのために、旧敵だった呂氏に頭を下げ、教えと協力を依頼します。
現代なら、優秀な人事部長です。
経営戦略とは、「ヒト・モノ・カネの最適化」と言っても過言ではないと思います。
技術の進化で、モノとカネの最適化は、過去と比較して、演算的に解を求める事が容易になりました。
一方、より良い品質、より安くの時代から、個人に最適なモノとサービスという時代に社会が変化してきた事で、ヒトの最適化が、より複雑に、より重要になってきています。
例えば、コミュニケーションが得意でなく、何か一つの事に没頭して、成し遂げる事が得意な人には、営業の仕事を担当させるより、情報分析、企画、プログラミングなどの仕事を担当させた方が、組織としての生産性が向上します。
また、各メンバが生産性を最大化できる環境を提供する事も重要です。
在宅勤務で、コミュニケーションが得意なメンバが社内メンバや顧客とオンラインでもコミュニケーションが取れるように、Zoomなどのコミュニケーションツールを物理的に提供する事は必須です。加え、例えば、営業Tipsというスレッドを立ち上げ、社内ナレッジの共有を促進させるなど「コミュニケーションの“場“」を設ける事もポイントになります。
一方、一人で集中的に作業がするのが得意な人には、彼らがストレスなく、仕事ができるように、彼らが参加する必要がないコミュニケーションは省くべきです。また、ディスプレイ、分析ツールなどのPC機器/ソフトウェアの提供で、生産性が向上するなら、投資対効果の説明責任を果たせば、提供すべきです。
組織のトップに立つリーダーの役割は、各メンバの能力を見極め、そのメンバの能力が最大限に発揮できる役割と環境を提供する事だと思います。
結果、組織の生産性は向上します。
各メンバに均一的な目標を設定させ、その目標が達成できた人を評価し、できなかった人を評価しない等の旧世代的な評価をしている管理職は、自分の役割を放棄しています。
もし、管理職でこの人材の最適化が得意でないのなら、管理職の適性がないという事です。これは、「優劣」の問題ではないです。「適性」の問題です。
管理職(課長/部長)が営業担当やエンジニアより、偉いという考え方自体が、間違っているのです。
スーパー営業マンやスーパーエンジニアが優れた管理職とは限りません。むしろ、個として優秀であればある程、管理職の適性は低いと思います。そういう方は無理に管理職をさせる必要はないのです。
報酬制度的に、管理職にならないと年収が上がらないという制度であれば、その制度をすぐに見直すべきです。そうしないと、そもそも優秀な人材を誘致することができません。
⑦“アツき志”と向き合い、諦めない、自らの行動で示す
嬴政や信に、皆、何故ついていくのでしょうか?
その一番強い要因は、「“アツき志”と真摯に向き合う、決して諦めない、自らの行動で示す」からだと思います。
嬴政の「中華統一」、奴隷出身の信の「天下の大将軍」になるという夢は無謀なもので、最初は誰も信じないでしょう。
しかし、彼らはこれを実現するために四六時中、真剣に考え続けます。
どんな苦境が起ころうとも諦める事はしません。仲間の死など、いろいろなモノを議税にします。でも、決して諦めません。
そして、その夢を実現するために、自分自ら行動に移していきます。命を失う覚悟をもって、その夢の実現を目指します。
最初は小さな一歩かもしれません。ただ、これ繰り返す事で、この夢を一緒に実現したいと思う仲間が一人、また、一人と増えていきます。
そして、それはやがて、夢から志となり、個人のものからチームのものになっていきます。
現代においても、
ソフトバンクの孫さん、ファーストリテイリングの柳井さん、マイクロソフトのビル・ゲイツ、アップルのスティーブン・ジョブスなどの
経営者は、そうやって、夢を志にして、夢の実現を果たしたのです。