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キングダム経営戦略論:コンセプト設計編

今、一番売れているビジネス書。でお馴染みの「キングダム」について、経営戦略の観点から整理しました。

キングダム 39 (ヤングジャンプコミックスDIGITAL)

キングダム 39 (ヤングジャンプコミックスDIGITAL)

  • 作者:原泰久
  • 発売日: 2015/10/19
  • メディア: Kindle版
 


事業戦略編で、

①“型”で勝つ。型を身に付けねば型破りにはなれない
②俯瞰して、全体像を捉え、敵を分析せよ
③リスク発現を見据えたシナリオプランニング
④本質を捉え、末端でも分かりやすい戦略

の4点を説明させて頂きました。

コンセプト設計編では一番重要ともいえる点について、説明します。

⑤“戦略(Strategy)”より“思想(Concept)”が重要

嬴政の加冠の儀が執り行われている最中、咸陽にアイ国反乱軍の牙が剥かれた。秦の命運賭す一閃。 嬴政と呂不韋が“天下”を論じる。

私が最も好きなシーンです。

この“天下”をどう捉えるかが、“思想(Concept)”です。“思想(Concept)”は“戦略(Strategy)”より重要です。

※キングダム39~40巻より引用

呂不韋は天下の起源を貨幣制度と説きます。

“貨幣制度“が天下を作った。”金“が人の”欲“を増幅させたからです。貨幣制度の誕生で物々交換であったそれまでの世界は一変した。運搬しや腐らぬ貨幣は物流に距離を与え、散在していた社会を次々とつなげひろげっていた。

人は他人との裕福度の比較する物差しを手にしてしまった。当然、生まれたのは”他より多くを得たい“という『我欲』。それから千年、中華という広大で複雑な世界へとまで進化した。

為政者は国民に血を流させてはなりませね

この呂不韋は”操って国を治めます。私は十年で秦国を中華史上、最も富に満ちた国に成長させさることができる。

“暴力”でなく“豊かさ”で全体を積み込む。これが私の考える『中華の統治』です。

これが呂不韋の“思想(Concept)”です。

一方、嬴政は反論します。

お前達は人の“本質”を大きく見誤っている

たしかに人は欲望におぼれ、あざむき、憎悪し殺す。凶暴性も醜悪さも人の持つ側面だ。だが、決して本質でない。
その見誤りから争いがなくならぬものと思い込み、その中で最善を尽くそうとしているが、それは前進でなく、“人へのあきらめ”だ。

人の持つ本質は“だ。

形や立場が違えど、皆一様に自分の中心にある“光”を必死に輝かせて死んでいった。そして、その光を次の者が受け継ぎ、さらに力強く、光り輝かせるのだ。
そうやって、人はつながり、よりよい方向へ前進する。悲劇を増幅させ人を闇へ落とす最大のものが戦争だ。
だから、戦争をこの世から無くす。

武力でだ。

俺の代で終わらす。中華を分け隔てでなく、上下もなく一つにする。
そうすれば必ず、俺の次の世は人が人を殺さなくてすむ世界となる。

これが嬴政の“思想(Concept)”です。

そして、呂不韋とは悟ります。

大王の語る世と私の語る世は出発地が、、、前提とするものが違いすぎます。もはや、これ以上、語らっても結論には至らぬでしょう。

企業戦略においても、呂不韋に言う通りです。
どんな優れた戦略でも、この“思想(Concept)”が違うのであれば、交じり合う事はないでしょう。

企業戦略用語的に言うならば、“思想(Concept)”は、理念、ミッション/ビジョン/バリューに近いと思います。

例えは、

「企業価値を最大化し、株主への還元が会社の存在意義の大前提とする企業」と
「持続的な価値提供により、社会や国家と供に、成長を目指す企業」では、

戦略的に、経営統合した方が良いと分析しても、決して、上手くいく事はないと思います。

それは、前提となる「企業としての存在意義」の考えが違い過ぎるからです。
嬴政と呂不韋の関係です。

“戦略(Strategy)”より“思想(Concept)は、遥かに重要なのです。どのような戦略でも、先に、その戦略の前提となる思想(Concept)を考えるべきです。


考えるべき順番としては、
思想(Concept)⇒戦略(Strategy)⇒施策(Plan)⇒実行(Execution)
です。

そして、“付加価値の高さ“はこの順番通りです。
一方、”必要な資源(ヒト・モノ・カネなど)の量“はこの順番とは逆になります。
実行(Execution)が一番、資源が必要になります。思想(Concept)は一人でも考えられるからです。

これは、企業戦略に限らず、様々な場面でも当てはまる考え方だと思います。

例えば、現在の国内におけるコロナ騒動では、マスクや10万円給付などの「施策(Plan)/実行(Execution)」が議論の中心になっています。
しかし、本当に国のリーダー達が考え、議論し、国民に示さなければいけないのは、「思想(Concept)⇒戦略(Strategy)」です。

コロナからの国民の生命の安全確保、経済の維持、デジタルデバイドによる格差拡大阻止、失業率増加/自殺率増加阻止など、これだけ複雑に絡みあうと一つの正解がある訳ではないです。

だからこそ、どうような思想(Concept)≒ポジションをとり、その前提条件における戦略(Strategy)は何かの検討と伝達が重要なのです。

「コロナからの全国民の生命の安全を確保する」も一つの(Concept)だと思います。ただ、この場合、インフルエンザ、肺炎、交通事故で亡くなる人は存在するということと、コロナの対応の違いを明確に示す必要があります。
「ベンサムによる最大多数の最大幸福」論も一つの思想(Concept)だと思います。であるならば、「最大多数の最大幸福」を説明する責任があります。

この決断と説明責任こそ、リーダーの役目だと考えています。

最後に、話をキングダムに戻しますが、
自分の思想(Concept)を持っているから、リーダー、つまり“王(キング)なのです。
つまり、キングダムとは、戦略、戦術を描いている漫画ではなく、”思想(Concept)の戦い“を描いている作品なのです。