今、一番売れているビジネス書。でお馴染みの「キングダム」について、経営論の観点から整理しました。
①“型”で勝つ。型を身に付けねば型破りにはなれない
“斜陣がけ”、“輪動”、“包雷。
戦いの局面において、様々な戦術が使われる。過去の戦いで蓄積された様々な“型”を実践の戦いに適用している。
大切な事は、まずは型を身に着ける事です。経営戦略論でも、既に多くの型が存在しています。PEST、SWOT、バリューチェーン、VRIO等の分析手法などの多くの型が存在します。
まずは、この型を本質から理解する事が重要です。テクノロジーが進化した時代において、そんな戦略論は古臭い、実経営をやっている自分で事業戦略を考えるアプローチは危険です。
歌舞伎俳優だった中村勘三郎が語っています。
型を身につけてから、破るから“型破り”っていうんだよ!型があるから、型破りっていうんだよ!型がなかったら「形無し」
②俯瞰して、全体像を捉え、敵を分析せよ
李牧の優れた能力の一つに、戦いを常に鳥瞰図(bird's eye view))で全体を俯瞰して捉える能力があります。函谷関の戦いなど、各国で思惑が存在し、多くの将軍が各所で戦いが起きているような戦いにおいては、この能力は最大に活かされます。
現在、アマゾンによるホールフーズ買収、トヨタとソフトバンク/NTTとの業務提携など、業界の垣根がなくなりつつあります。
ある局面では競合、違う局面では協業など、ターゲット市場や競合先を定義することが難しくなっています。そのような状況だと、この“全体俯瞰力“が極めて重要になります。
・ターゲット市場は?、その市場はどのように細分化できるのか?
・その市場の変化要素は?その変化要素はどのタイミングにどのような市場変化をもたらすのか?
・その市場規模はどれぐらいか?、今度、どれだけ成長するのか?
・市場を細分化した時にどのプレイヤーがどのようなポジショニングをしているか?
・各プレイヤーのシェアとケイパビリティは? など
この“全体俯瞰力“を持つことで、目覚ましく変わる市場環境変化でも最適なアクションを実行する事ができます。
③リスク発現を見据えたシナリオプランニング
鄴の戦いにおいて、昌平君が立案した策(戦略)は、想定していた前提条件が変更になり、王翦の策で動くことになります。事前に、昌平君は王翦に環境変化に応じて、策を捨てる事を許可しています。
これは、将来起こりうる環境変化を複数のシナリオ代案として用意し、それに対する複数の戦略案を検討・用意する手法で、「シナリオプランニング」と言います。
戦略論的には、1970年代初頭、ロイヤル・ダッチ・シェルがオイルショックに対処した事で注目を浴びました。
シナリオプランニングと従来型戦略の違いは、外部環境を連続的な未来で予測可能と前提とする訳ではなく、不連続な未来で予測不可能であることを前提としていることが一番の違いです。
この手法は、市場が環境変化する場合、所謂、“確変”モード状態である場合、大きな効果を発揮することができます。
④本質を捉え、末端でも分かりやすい戦略
その鄴の戦いは、“兵糧攻め合戦”と定義しています。この“シンプルさ”も重要です。
戦略の本質はシンプルであるべきです。
そして、その本質を将軍(社長)から末端の歩兵(社員)まで理解しているから、個別の戦術(施策)が多くなり、複雑化しても、最終目標を見失うことはありません。