「自己成長の実践」というテーマです。
技能がどのような構造になっていって、どうすれば実践できるようになるかを説明します。 思考の技能(スキル)の構造を大きく3階層になっています
第1階層目は技術・知識層、第2階層目は思考・言動層、第3階層目は素質・資質層です。
即効性は第1階層目が高く、第3階層目が低い。必要な獲得必要時間は第1階層目が短く、第3階層目が長い。しかし、第1階層目の技能の種類と成熟度は、第2・3階層目の成熟度に限定される。
都市で言えば、第3階層目がインフラ、第2階層目が建物、第3階層目が建物に中に入る人・サービスのイメージです。
では、具体的に各階層の技能(スキル)はどのように構成されて、獲得するための実践はどのようにすれば良いのか?という説明をします。
第1階層:技術・知識層
第1階層は技術・知識層であるため、獲得するための方法論が明確にあり、やれば誰もができるようになる技能です。例えるなら、漢字ドリルの世界です。
具体的には、英語、エクセル(数学)、財務分析、調査・ 分析手法、会計などです。
この層の技能獲得のコツは、ただ、継続して、やるだけです。人間の記憶力などの特性を理解して、獲得方法の工夫はありますが、基本的に投入した工数だけ成長が望める層です。継続できるように、ゲームフィケーション要素で楽しむのもポイントです。
戦略コンサルタントの実践としては、プロジェクトに関連して、直接的にアウトプットに紐づけて、少し広く深く、対応すると効率的です。
例えば、新規事業立案プロジェクトなら、そのタイミングで、PL作成(プロジェクション)、調査・分析手法などの技能を獲得した方が効率的です。
また、速度と品質が両方共に、ほぼ最大値まで達したのなら、そのタスクは下の職位メンバに移行した方が良いです。本人にとってはオペレーション状態となっているタスクなので、そこを繰り返ししても成長は望めないです。ならば、未熟なメンバに機会提供した方が全体として最適です。
気をつけるポイントは、「本当に速度と品質が最大値までに達しているのか」と、「その速度と品質を最短で獲得するために形式化できているのか」です。
面倒くさいタスクを職位の下のメンバに振るのは、単純に投げているだけで、チーム全体としの知的生産性は向上しません。
例えば、コピー一つでも速度と品質に最大値まで上げ、形式化することでいろいろできます。
そして、最も大切なことは、何歳になっても新しい技能を一つでも多く、深く獲得し続けることです。 第1階層の技術・知識層は劣後し易いので、新陳代謝をし続けなければなりません。
第2階層:思考・言動層 要素編
第2階層は、
①目的思考、②論点思考・仮説思考、③考える技術・書く技術、④段取り力、⑤伝わる技術・動かす力
の5点で構成されます。
「①目的(イシュー)思考」は、目的(最終的に達成したいこと)と手段(目的を達成するための方法)の違いを意識的に捉え、常に手段が目的化しないことを避ける必要があります。正しい課題(イシュー)を定義することも同様な意味です。
目的が明確化することができるのであれば、その目的を果たすための論点を洗出し、限定された情報での仮の答えを出す「②論点思考・仮説思考」が必要になります。
その後、その仮説を検証(バリデーション)する上で、ファクトからの推察が必要になります。その検証で必要な技能が、情報を深さと広さで整理する技術(MECE/ロジックツリーなど)や推論技術(演繹法/帰納法など)の「③考える技術・書く技術」です。
検証(バリデーション)を終えた仮説を実行計画としてアクションに落としこむ場合、前提・制約条件や、自分でコントロールできない外部環境を踏まえて、最も効率的なアクションを設計する「④段取り力」がポイントになります。
最後に、そのアクションの効果を創出するためには、「⑤伝わる技術・動かす力」が必要です。人は感情という要因が働き、情報・理解度にも格差が存在します。その前提条件で、「伝えるではなく、他人にどう伝わるようにするのか」、「どうすれば動いてもらえるのか」の技能がなければ、①~④の技能を持っていたとしても、外部に影響を及ぼすことはできません。
この第2階層の成熟度が上がると、情報・知識・経験などを分解して、思考で新結合ができるようになります。つまり、知識・経験のないサービス・テーマでも一定のパフォーマンスを発揮することができます。
逆に、知識・経験あるサービス・テーマならデリバリーを再現することができるが、知識・経験のないサービス・テーマだと、パフォーマンスが落ちるのは、この第2階層が弱いからです。第2階層が脆弱なため、第1階層のコピペしかできないということです。
自分の第2階層の成熟度を把握するために、自分の好きなテーマで、自分の言葉で、どの程度の事を言語化できるかを試してみるのも価値はあると思います。
この話は、コンサルティングにフォーカスした話ではない。例えば、人生そのものどう過ごすかでも適用できます。
この層における各個別技能がより具体的にどのような技能なのかは、山ほど関連本があるので、省略します。ここでは、実践として、この技能をどのように獲得するについて、説明します。
結論から言うと、インプット(I)⇒プロセス(P)⇒アウトプット(O)⇒フィードバック(F)(以下、IPOF)を繰り返しするしかないです。
インプットとアウトプットは多くの量と種類で、プロセスはより早く・深く、フィードバッグは様々な頻度ですることが、技能向上のポイントです。
前提条件として、この第2層は、数ヵ月などの目に見える効果を期待しないことです。最低でも効果がでるのは、1年ぐらいはかかると思います。
次に、具体的に各個別技能でどのようなIPOFが良いかを実経験から推奨します。
第2階層:思考・言動層 実践編
「①目的思考」は、「会議」を利活用するのが良いです。「会議」は最も、手段が目的化し易い例です。プロジェクト全体における目的と手段としての会議、各会議での目的と、個別議論での手段を意識しながら、会議設計をする。会議設計した上で、可能な限り、自分自身が会議オーナーを取る。
例えば、自分が主催して、スーパーバイザーとの二人だけの会議で、会議オーナーも取らなければ、目的思考を放棄していると言えます。
「②論点思考・仮説思考」は、「資料作成」時に訓練するのが良いです。プロジェクトや資料全体の中で、自分が担当する担当スライドが、どの論点、仮説の実証に当たるのかを常に意識して作業することです。
また、作成スライド単位で、「何を書いていて(スライド名)」、「何を伝えたいのか(メッセージライン)」、「そのメッセージをどのように伝えるのか(ボディ)」のかを明確にすることが重要です。
スタッフの陥り易いケースとして、ボディをどう書けば良いかに悩み、それをスーパーバイザーに聞こうとする事です。ボディ作成は時間を要しますが、価値があり、重要なのは、「何を書いていて(スライド名)」、「何を伝えたいのか(メッセージライン)」かです。これが間違っていたら、ボディに時間を使うのは無駄そのものです。
もちろん、第1階層の技能として、ボディを早く、分かりやすく、綺麗に書ける技能も重要です。ただ、これは、訓練すれば、誰にでも出来るスキルです。
「③考える技術・書く技術」は、「議事録」のIPOFが効果的です。本の要諦や、日記なども効果的だと考えています。「議事録」は、言葉で発せられた情報を構造的に纏めるという事なので、「考える技術・書く技術」そのものに近いです。
また、レビュアーの立場になった場合、自分自身にそれなり成熟度がないとレビュアーもできないので、「議事録」が苦手という事は、本の要諦や日記なども含め、訓練を重ねる事を推奨します。
「④段取り力」は、「WBS:Work Breakdown Structure(ToDoリストを進化させた進捗管理)」のフル活用を推奨します。「④段取り力」が未熟の場合、「WBS」が適切にブレイクダウンできておらず、まだ構造化もされていない事がよくあります。つまり、WBSがToDoリストと化している場合です。
もちろん、ToDoリストは抜け漏れをなくし、納期遅れリスクをなくすという意味では効果的であります。しかし、最も効率的なアクションを設計するという目的の手段としては、成熟しきれていないです。
どの単位で作成、確認が必要になるかとタスクがブレイクダウンされ、それらの固まりが、最終的なマイルストーンで一つに終結するから、「Work Breakdown Structure」なのです。
「⑤伝わる技術・動かす力」は、他人とコミュニケーションするしかないです。その中で、どうすれば、他人に伝わるのか、他人が動くのかを経験して、学び、向上していくしかないです。
単に、コミュニケーションを増やしても効果的でないので、常に目的と、手段としてのコミュニケーションを意識することで効率的にこのスキルを向上することができると思います。
また、前提知識など情報格差がある人に対して、分かりやすく話すことも良い訓練だと思います。
最後に、素質・資質層である第3階層ですが、この層は、一般的に性格、才能といわれるレベルです。この第3階層レベルで成熟度が増すと、あの人変わったようねと言われるレベルだと思います。
第3階層:素質・資質層
この第3階層を構成しているのは、
「①認知力」、「②集中力」、「③自分事化」
の3要素です。
まず、「①認知力」は正しく認知していないと、情報を適切にインプットもする事もできません。最近、良く重要だと言われている「メタ認知(自己の認知活動(知覚、情動、記憶、思考など)を客観的に捉え、評価した上で制御すること)」も、「①認知力」の一つです。
「②集中力」については、「左利きのエレン」という漫画に分かり易く、ストリーリー仕立てで纏まっているので、読んでみてください。その漫画では「才能の正体は“集中力の質”」であると言っています。
その“集中力の質”は、
長さ:集中力の継続可能時間
深さ:集中力の深度、耐久度
早さ:集中深度が深まる速度
の3つで構成されています。
「③自分事化」は、頭で分かっていても、本当に行動レベルで「自分事化」する事は、困難だと思います。
ふつうに考えて、自分の生命と生活に影響しない限り、直接的影響しない会社(仕事)を自分事化するのは論理的に難しいと思います。
別に自分事しなくても、会社から与えられた役割をこなして、責任を果たせば、給与は貰える訳で、かつ、その組織に長くいればいる程、“こなす”方法を獲得してしまいます。
「①認知力」、「②集中力」、「③自分事化」の第3階層技能を向上させるためには、私の実体験を踏まえ、“行動から変えよ”です。
この層は、あれこれ思考してもあまり意味がないです。まずは、今までしなかったことを行動することです。なるべく、その行動は他人に影響を与える行動が良いと思います。
毎日5人以上と10分以上話す、会議で最低2回は発言するなど、最初は、どんな些細な事でも良いと思います。
今までと違う行動を起こすこととで、今まで違う効果・影響がでます。最初はこれが良い効果をもたらさない可能性もあります。しかし、自分が行動することで、他人に影響を与え、自分の回りの環境に変化を主体的に起こすことができます。
行動⇒影響⇒環境により、行動⇔環境の双方向性が高まります。この“行動⇔環境の双方向性”により、最初は本当に小さな一歩ですが、「③自分事化」が高まります。
そして、自分がどのような行動を起こすと、どのような環境変化が起きるのかの経験を積むことで、「①認知力」も高まります。
“行動⇔環境の双方向性”が上手く回り始めると、自分の意欲(モチベーション)が高くなり、集中する機会も多くなり、「②集中力」も高まります。
もちろん、この好循環がすぐに回る訳でないです。この第3階層で効果を実感できるのは、早くても2、3年はかかると思います。
この層を向上させるには、最低でも2年以上は行動を継続することです。ほとんどの人はこれができないから変われないと思っています。
初めての一歩で嫌な体験をしても、少しでも良いので、対応方法を調整し、次の一歩となる行動を取り、それを続けられるが最大の肝だと考えています。
そして、若いうちに、行動を起こすことです。